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降服
降服
著者: 六出サル

第1話 

01

 南広志が私に離婚を提案したのは、同級生の集まりから帰ってきた翌週だった。

 「どういう意味?」

 私は信じられなかった。

 私たちは結婚して3年、ずっと仲良しだった。つい数日前には妊娠の報告を両方の親族にしたばかりだった。

 南広志は疲れた様子で、目の下にクマができていた。彼の顎には手入れされていないひげがあった。

 心に罪悪感を抱いた彼は視線をそらし、うつむいてゆっくりと言った。「一時的なことなんだ。彼女を見捨てるわけにはいかない」

 彼女?

 名前を言わなかったが、私は誰のことか分かっていた。

 彼を振った本命彼女のことだった。

 「詩織は今、苦しんでいる。夫との関係が破綻していて、離婚を望んでいるが、相手が離婚を拒否していて、裁判を抱えている。今は一人で住んでいる」

 「何せよ、俺と彼女は過去に関係があった。今、困っている彼女を、見捨てるなんてできない」

 私はしばらく黙ってから、尋ねた。「彼女の離婚案件は、あなたに弁護を依頼したの?」

 南広志は頷いた。

 そして、緩やかに話した。「彼女の夫が権力者だから、案件が非常に手強い。俺たちの離婚も、君を守るためなんだ。将来......」

 彼は言葉を切り、何か言いたそうだったが、私が遮った。

 「じゃあ、あなたのご配慮に、感謝するべきかな?」

 私の嘲笑のトーンがあまりにも明らかだったのか。南広志は息を詰まらせ、しばらく黙っていた。

 私は立ち上がり、椅子にかけてあったコートを取った。「じゃあ、離婚しよう」

 南広志は慌てて立ち上がった。「こんな遅くに、どこに行くの?」

 「今から、私たちはもう関係がないんだ」

 私はそう言い残し、ドアに向かって歩き出した。

 しかし、ドアのところで我慢できずに振り返り、彼に真っ直ぐな視線で問いかけた。「あの時、柳詩織に振られた後、どれほどひどい目に遭ったか覚えてる?南広志、あなたは私に言ったよ......必ず代償を払わせるって」

 ゆっくり閉まったドアが、南広志の青白くなった顔を遮った。私の後半の言葉も遮った。

 南広志、あなたは本当にそんなに人情深いのか、それとも......ただの卑屈なのか?

 02

 私と南広志はほぼ幼馴染だった。

 学生時代の彼は成績優秀で、見た目もハンサムだった。

 貧困家庭だが、女の子たちに好かれていた。

 彼が引き出しに入っていたラブレターを全部ゴミ箱に捨て、うんざりした顔で「恋愛なんて考えてない、うるさいだけだ」と、私に言った。

 それから、私は彼との距離を保ち、青春のトキメキを心の中にしっかりとしまっていた。

 後になって、彼にも例外があったことを気づいた。

 彼女は柳詩織だった。

 柳詩織は美しく、危険な魅力を持っていた。

 皆はぱっつん前髪にして制服を着ているが、彼女は上着の下にキャミソールを着て、唇にきらきらしたリップを塗り、目立って傍若無人だった。

 彼女は休み時間に南広志を捕まえて、「刺激的なことをしてみない?」と尋ねた。

 南広志は嫌悪感を示して視線を逸らしたが、次の瞬間、彼女に首を引っ張られ、キスをされた。

 彼の赤くなった顔を見て、柳詩織は笑いながら言った。「ほんと、恥ずかしがり屋ね」

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